頭がよくなりたい!受験勉強の薬part1
前回までの記事で、その話を拡張しながら紹介していこうと思ったのですが、このテーマで書きたい欲が急に出てきたためいったん前回までのとは別でこの話をします。
頭がよくなりたい!頭がよくなる薬とかないのかなぁ…
皆さんは一度でもこう思ったことはありませんか?
私は薬大好き人間なので受験生の時こんなことばかり考えていました。
「頭が良い」とはどのようなものなのかよくわからなかったのですが、「記憶力をブーストさせる薬」があればいいなぁとずっと考えていました。
実際今でも私の家には「ピラセタム」「アニラセタム」「ヌーペプト」といったスマートドラッグとして有名なものが積んであり、勉強するときには飲んで勉強しています。
※現在では「ピラセタム」「アニラセタム」は個人輸入ができなくなっています。
劇的な効果を自覚しているわけではないですが飲み続けています。また、個人輸入が禁止されたため新しいスマートドラッグを見つけようということで情報収集をしています。
記憶と学習の機構については今だ解明されておらず私はこのパズルの解答を熱望しているのですが、スマートドラッグの探求によって少しずつ前進するのではないかと私は信じています。このタイトルがpartいくつまで続くのでしょうか。
記憶課題については様々な可能性が出てきているのですが、今回は「アセチルコリン」の話をしようと思います。
古い話ではあるのですが、初めて発見された神経伝達物質であり、多くの研究がなされ、様々なことがわかっているにもかかわらず記憶に関して深いことはわかっていないという興味深い物質です。また、ほかの薬物の話をするのに神経伝達物質の存在なしで語ることはできないため、神経伝達物質のモデルとしても最初の話題として適当であると思います。
記憶について考えるときに、記憶ができない状態を考えることは当然のことです。記憶ができない状態を記憶ができる状態と比較し、何が違うのか見つけようというわけです。
記憶ができない記憶喪失のモデルとしてアルツハイマー病患者をあげることができます。
アルツハイマー病は主として初老者をおかす病気で記憶喪失を伴います。老年者の記憶喪失は脳血管の血栓や出血によるが、老年痴呆の原因がアルツハイマー病に類似の障害であることが多いとされています。
研究者たちはアルツハイマー病患者の生物学的異常の探索において、患者の神経伝達物質の濃度を測定しました。アルツハイマー病患者と同年代の健常者の死後の脳について様々な神経伝達物質について測定したところ、ほとんどの神経伝達物質についてはいずれも正常であったにもかかわらず、アセチルコリンとその合成酵素についてのみアルツハイマー病患者の脳で異常に低い値となっていることが分かったのです。
また、もう一つの興味深い話題は、アトロピンという化合物に関連したものです。
神経伝達物質としてアセチルコリンは最初に発見されたと書きましたが、初めて発見されたのは脳ではなく心臓の迷走神経と呼ばれる、心臓の拍動をコントロールする神経でした。
神経伝達物質が知られるよりずっと昔から、ベラドンナ植物の抽出物が腸管の収縮を緩和し、胃酸分泌を抑えることなどが理解されており、19世紀中ごろにベラドンナ植物の活性成分であるアトロピンが単離され、心臓の拍動を遅くする迷走神経の働きを遮断することが示されました。
また、アトロピンにおける中毒症状として記憶喪失が知られていました。
つまり、ここにおいても脳における記憶の機構にアセチルコリン含有の神経が関与していることをこのアトロピン-アセチルコリンの結びつきは示唆していました。
このように、神経伝達物質としてのアセチルコリンが記憶の機構に関係しているということが明らかになりました。
このため、研究者は、アルツハイマー病の治療薬として失われたアセチルコリンを補充するために治療薬の開発に努めています。先述した アニラセタムのような物質は、アセチルコリンの合成を促進する物質としてアルツハイマー治療薬として開発されたものであり、健常者がこれを摂取することにより記憶が増進すると考えられスマートドラッグとして用いられるようになりました。
また、神経細胞から遊離したアセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼなどの酵素によって生体内では急速に分解されます。
すなわち、アセチルコリンエステラーゼの働きを阻害することによってもアセチルコリン濃度を高めることができると考えられ、天然のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるフペルジンA(トウゲシバに含まれるアルカロイド)などが用いられたり、ガランタミンのような物質が用いられることもあります。
また、前駆物質のコリンを大量投与する方法も考えられます。この方法はアルツハイマー病患者に初めに考えられた方法でしたが、アルツハイマー病患者においてはアセチルコリンを合成する酵素のアセチルコリントランスフェラーゼも不足していることもあり、予想ほどの効果はありませんでした。
またアセチルコリンそのものを摂取してもこの化合物は電荷を帯びていて血液脳関門を通過できないため、脳中に移行した後でメチル化を受けアセチルコリンとなるDMAE(ジメチルアミノエタノール)の摂取も有効であると考えられています。
また、最近では東京大学、北海道大学などが忘れた記憶を復活させる薬を発見したと発表しています。時間があれば読んでみてください。
URL ↓
https://www.hokudai.ac.jp/news/190109_pr.pdf
これは脳内ヒスタミンに関連したもののようです。
また、バソプレシンのような物質についても記憶力の向上が報告されていますが、今回は長くなるためアセチルコリンの紹介にとどめておきます。